第34章 【桜】×【??】
「うん。俺、もうここには来れないんだ。…ごめんね。」
突然の蒼依さんの言葉に、息が詰まる。
「雨衣ちゃんと話せて楽しかったよ。」
にこにこと、笑顔で話す蒼依さんだけど、どこか悲しそうにも見えた。
その姿から、嘘では無いとすぐに分かる。
「また来年。ここに来てよ。それなら、また会えるかもしれない。」
「…っ、来年だけなんて言いません。蒼依さんに会えなくてもいい、
また会えるまで、通い続けても良いですか…?」
上手く言葉が出なかったけれど、私は蒼依さんに伝えた。
会えなくたって、綺麗な桜はもう見れなくたって、この場所に来るだけでいいから。
「良いよ。いつか俺がまたこうして来れる様になるまで、待ってて。」
「はい。約束ですよ?」
無理して笑ってみせる。
本当は待って。行かないでって、泣きながらでも止められたら良かったけど。
それではダメな気がした。蒼依さんを困らせてしまうだけだから。
「うん。約束。」
ふわり、優しくて暖かい風が吹く。
その風は、暖かな春を告げるもので。
その瞬間、そっと私の頬に暖かなものが触れた。
「…!」
「今度会ったその時は、君のその唇、奪いに行くから。」
悪戯っぽく笑ってそう言って、蒼依さんは私の前から姿を消した。
___ 火照った顔は、まだ冷めない。