第34章 【桜】×【??】
春といえば、桜。
「~♪。」
桜。
今年も…ちゃんと綺麗に咲いてる。
手に取ったカメラで、桜の咲いた木を撮る。
「…綺麗。」
撮れた写真を眺めては、満足する。
「うん、良く撮れてる。」
「…うわああ、!」
1人で見ていたはずなのに、後ろから気配と声がした。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこには綺麗な男の人が居た。
____まるで見蕩れてしまう。目を奪われてしまいそうな、そんな人。
「…驚かせちゃった?ごめんね。
君があまりに嬉しそうに桜を眺めていたから、気になっちゃって。」
「桜、好き?」
「…はい!とても!」
「…そっか。それは嬉しいな。…君、名前は?」
「えっと…雨衣…です。」
「雨衣ちゃんか。…俺は、蒼依。よろしくね。」
ふわり、柔らかく微笑む。
「良かったら、少し俺と話そうよ。」
「はい!是非!」
蒼依さんと話している時間はとても楽しくて、
あっという間に時間が過ぎてしまうように感じた。
「そろそろ、私帰らないと…ごめんなさい。」
辺りが暗くなり、スマホから時間を確認すると、頭を下げた。
すると蒼依さんは、一瞬だけ悲しそうな顔をして、またすぐ笑った。
「そうだよね。…それじゃあ…さよなら。
今日はすごく楽しかったよ。ありがとう。」
その悲しそうな顔が頭から離れなくて、私は提案した。
「明日!明日もまた来ますから。必ず、ここに。」
「…って、蒼依さんにも都合とかありますよね。すみません」
でも、流石に迷惑かと急いで訂正をする。
「全然気にしないで。俺は大丈夫だから。また明日、ここで待ってる。」
そう言う蒼依さんの顔は、どこか少しだけ、嬉しそうにも見えた。
約束通り、私は今日も桜の木へと向かった。
そこには既に、蒼依さんが居て。
「こんにちは。」
「ああ、こんにちは。本当に来てくれたんだね。驚いたよ。」
「もちろんです。昨日、すごく楽しかったですから。」
「ふふ。それは嬉しいなぁ。」
なんて、そんなやり取りをした。
そんな対した事ない会話だったけれど、楽しかった私は毎日通うことに決めた。
それから、決めた通り何日も通い続けた。
毎日毎日、すごく楽しかった。時間だって、やっぱり過ぎていくのは早かった。