第32章 モヤモヤした気持ちは晴れないままで……
翌日。
私は普通に学校に登校し、放課後まで過ごした。
(けっきょく昨日一日考えた結果、辿り着いたのは『美月ちゃんが博臣先輩を好きなんじゃ……?』というものだった……)
「……さん? 春野さんっ?」
「……っ! えっ、あっ……神原秋人……なに?」
「なに? じゃないよ。 さっきからずっと呼んでたのに気づかないなんてどうしたのさ?」
「……ごめん。 考え事してた」
「……考え事?」
「うん。 で、何か用だった?」
「あっ、うん。 昨日、博臣とはどうなったのかな〜って思ってさ?」
「べつに何もなかったよ?」
私がそう言うと神原秋人は何だか難しい表情で「本当に……?」と、聞いてきた。
「こんなことに嘘言ってどうするの? 本当だってっば」
「そうか……。 なら、何で博臣はあんなに浮かない顔をしてたんだろう……」
「……え? 浮かない顔……?」
「うん。 何だか博臣も考え事をしてるようだったんだよね……」
「博臣先輩が考え事を……」
「そうそう。 すごく思い詰めた表情をしてさ……」
「…………」
「てっきり昨日、春野さんと何かあったのかなっと思ってたんだけど違ったんだね」
(博臣先輩も考え事だなんて……もしかして、美月ちゃんのことなのかな……?)
博臣先輩は私に何かを隠している気がする。
それもきっと『美月ちゃんのこと』で、だ。
昨日、博臣先輩がしてくれた話のあとから博臣先輩は様子がおかしかった。 いや、それは博臣先輩だけじゃなく私もだったが。
私が『風呂場でのやり取り』について深く聞いてしまったのがいけなかったんだ。
私が深く聞かなければ、博臣先輩の様子に変化はなかったかもしれないのに……。
「……さん。 春野さん? 大丈夫?」
「……! あ、ごめん……大丈夫」
「……本当に博臣とは何もなかったの?」
「……うん。 何も……」
「それならいいけど……春野さんって博臣と何かあるたびにボーッとなるからさ……今回も何かあったのかなって思ったりしたんだけど本当に何もないの?」
神原秋人はそう言って私の目をまっすぐに見つめてくる。
「……〜っ!」
私はそんな彼の目に耐えられなくなり本当のことを白状することにした。