第32章 モヤモヤした気持ちは晴れないままで……
博臣先輩の家からの帰り道。
私は先ほど博臣先輩としたやり取りを思い出しながら歩いていた。
そして。
「……あ。 けっきょく博臣先輩が風邪を引いた原因について詳しく聞いてない……」
ふと、思い出したことを呟いた。
(けど、聞かなくて良かったかも……)
もし聞いていたら知りたくなかったことまで知ることになったかもしれないし。
「…………」
(でも、兄妹で裸を見られたら恥ずかしくなるものなのかな……?)
「……家に帰ったらお兄ちゃんに聞いてみようかな」
そう思いながら私は家に続く帰り道を歩いた。
…………
……
「ただいま〜」
そして私は家に帰ってきた。
「おっ。 やっと帰ってきたか、お帰り」
私が玄関から中に声をかけるとリビングにいた兄貴が私を迎えに出てきた。
「ただいま、兄貴」
「あぁ、お帰り。 それにしても昨日、一緒に部活をしている同級生の女の子から電話がかかってきて『華菜さんを泊まらせさせたい』なんて言われてビックリしたぞ。 一体何があったんだ?」
「えっと……その子の家で話が盛り上がって……」
「そうなのか?」
「……う、うん」
(あれ? もしかして兄貴はその子が博臣先輩の妹だって知らない……? それなら都合がーー……)
「……そういえば電話の女の子の苗字が『名瀬』だったんだが……まさか、華菜に付きまとっている先輩と関係あったりするのか?」
「……!」
(私の兄貴は鋭かったーー……)
「まさかその先輩の妹だったり……?」
「う、うん……まぁ……」
私は目線を泳がせながら答えた。
(……この兄貴に私以外の『妹の存在』を教えると大変なことになるっていうのに頷いてしまった)
私がそう思っていたら……
「そうかっ! あいつの妹なのか‼︎ なぁなぁ、その子は可愛いのか? 美人か? どんな感じの子なんだ? 今度うちに連れてーー……」
(あぁ……始まった……)
うちの兄貴は本当にウザいシスコン野郎だよ……。