第104章 夏の大三角(12)殿様ゲーム編
広間に凄まじい空気が流れる。
まるで戦前のような、
完璧な不穏の雰囲気が立ち込め……。
緊迫感が漂う……。
冷や汗が噴き出す中。
それでもやはり、先手を!三成は、メガネの中心部を中指でグッ!と押し、激しい動悸を押さえつけ、両頬を軽く叩き気合いを入れる。
「では、私から……」
壇上に上がる三成を、周りは静かに見守る。
そして、
すぅー。
部屋の空気を吸い込み。
はぁー。
息を細く長めに吐いた後。
ニコッ。
ついに!!
「いしだみつなり…でちゅ。だいしゅきなたべものは〜ちぇんぱい!」
違和感なく完璧にソツなくこなした三成に、思わず盛大な拍手が贈られた。
「あいつ、ちゃっかり……」
「どさくさ紛れに……」
「ちぇんぱい?チェリーのパイ?」
ひまり、本人には全く気づいてないが。秀吉と光秀は、手を叩きつつ感心する。
「問題は次だな」
「問題は次ね……」
政宗と副部長は家康に視線を向ける。
瞬きも忘れ目を見開き、口も薄っすらと開いていて……
片腕を掴んだままピクリとも、動かない。
「家康、大丈夫??」
それを見て流石に心配になったひまりは、近づいて顔を覗き込み……
「俺にアレをしろって?……あり得ない。酷い……酷すぎだし。心身が、ぼろぼろに崩壊……完全に黒歴史…ブツブツ……」
完全に遠くに行ってしまった幼馴染に、はにかむ。そして、元気付ける方法は無いかと考えた後。チョイチョイと家康を屈ませると、何かを耳打ちする。
途端。
やる気になった家康。
ぎゅっと眉間のシワを深く刻み、顔を背けながら、
「と、くがわいえやすで、……ちゅ。しゅ…き、なたべ、もの…はひまり…」
何!まさかの!
家康まで!!
しかもはっきりと名前付きで!
ひまり以外が息を呑んだ瞬間。
「……と、…いっ…ちょ。…はぁーっ。…もう、無理…///」
家康は手で顔全体を隠し、その場に崩れ落ちた。