第2章 偽りの人
またか…
もう、何百回、何千回と見たこの夢。
いつも同じところで終わって、決まって起きると泣いている。
…所詮、過去の事。
そう自分に言い聞かせて、やっと起きる。
今日は大事な任務の初日だ。
やつれた顔をしていてはいけない。
一つ頭を振ると、ベッドから抜け出た。
動き易くて気に入っている、黒の細身の長ズボンに、同じく黒の長袖シャツ。
シャツの上から、青緑のパーカーを羽織る。
トーストを焼いて、昨日の残りの茹で卵と一緒に食べる。
食器を洗って、出掛ける準備を済ませると、私は玄関の姿見の前に立った。