第2章 red
「翔くんってさ」
「ん?」
クロワッサンを口に入れる彼が、
言葉にならない音だけの返事を返した。
レンジでチンしたカリカリのクロワッサン。
くずが口の回りに少しついて
その他はポロポロとテーブルに落ちていく。
「…口、ついてる」と子供のような彼に笑う。
「美味しいけど食べにくいよね
クロワッサンって」
「うん、わかる、
男の子とは一緒に食べたくな…」
ってクロワッサンの話じゃなくて!
話の途中で止まった私を
翔くんが大きな目で見つめる。
「…あ、いや、あのね翔くんってさ」
「…え、太った?」
「…はい?」
「やっぱり?わかってんだよ、
わかってるんだけど
ちゃん、飯うめえんだもん!」
「…や、あのね、違うくて」
「え?違うの?」
うん、違うから、
ちょっと聞いてくれないかな。
このお喋り王子。
「…翔くんって、いつ落ち込んでるの?」
その突然すぎる質問に翔くんが
「落ち込む?」と聞き返した。