第2章 red
作業を初めて20分。
だ、ダメです。
翔くんのマネして
作詞なんてやってみようかと思いましたが
どうもうまくいきません。
私は自分の回りを見た。
くしゃくしゃに丸めた紙が沢山。
私に作詞なんて凄いこと、向いてないんだな
と思って、目の前に座る作業中の彼に目をやると
「お疲れ様、」
と目が合った翔くんに笑われた。
「え!い、いつから!」
作業に没頭していると思っていた彼が
パソコンの画面を閉じ
コーヒー片手に私を見て微笑んでいる。
「えーっとねえ、約15分くらい」
「…(それほとんどですね)」
「どう?何かいいの出来ました?」
と私の手元にある紙を覗き込む。
「だ、だめだよ、さすがに、無理です」
恥ずかしいよ、
こんなただの手紙のような文字を
プロに見せるなんて。
話を変えるように聞いてみた。
「あ、仕事は?終わりそう?」
「うん、バッチリ。
あ、コーヒーありがと、それに」
彼がポケットから白い紙切れを取り出す。
丁寧に広げると
くしゃくしゃにされたシワが目立つ紙切れ。
『初めて見る姿に、また好きの気持ちが熱くなる』
紙に書かれたそれは
私が素直に書いた幼稚な文字。
彼が私にそれを見せて
「これって俺のこと?」
と頬杖をつき、片方の口だけ
意地悪そうに上げる。
翔くんは最近よくこの顔をする。
赤面した私がそれを奪い取ると
あはは、と大声で笑った彼が
「俺も、同じだから」
と私を優しく抱き締めた。
END.
「好きの気持ちが熱くなったから
一緒に風呂入りません?」
「え!まだお風呂の時間じゃ」
「いえ、もうお風呂の時間です」