第1章 blue
「・・・う、ううううん」
「あ、今無理した?」
い、いや、無理とかではなくて
反射的にちょっと「う」が多くなっただけで
「うん、わかるよ!わかる、素敵だね!」
「…わかるの?」
「う、ん、わかるよ!」
「ほん、と?」
智くんの顔が少しずつ明るくなる。
やばい、なんだろう…
ね、猫?いやそんなわけない。
カバ?いやそれも…
「ちゃん」
智くんがその粘土を
「ん」ともっと前に出した。
「え?」
「これ、ちゃん」
「え、ええ!?」
さ、としくん
どう見ても四足歩行じゃない?この子。
「あ、やっぱり似てない?」
と頬に茶色の泥をつけた智くんが笑った。
「ね、猫かと思った」
「あ、やっぱりわかってなかった」
「ご、めんなさい」
「うんん、嘘、わかってたし」
「え、そう、な、の?」
「うん、それにちゃん
こんなブサイクじゃねえし」
「そ、そう、なんだ。」
「うん、ここがね、違う。
ここは2本だね。」
とその四足歩行を二足歩行に変えただけで
あとは何も変わらない。
「うん、完璧」
満面の笑みで、粘土の私を満足げに見る彼が
まるで小学生の図工の時間に見えた。
「ふふ、智くん、子供みたい」
私がそう言うと、少し困った顔をして
「うーん…、ほんと、オイラって
バカっぽいよね」
と息を吐いた彼に
「ふふ、そんなこと。
智くんとの時間はなんだか平和で、
凄く好き」
と思いを伝える。
そんなあなただから、
そばにいたいと思うわけで。
「・・・ちゃん?」
「はい」
泥だらけの顔に、
白いタオルを頭に巻きつけた作業着の彼が
「すうき」
と、まるでバカップルかのように
わざとらしく言った。
END.
「もっとバカになったら
もっと好きになってくれる?」
「おしゃべり出来る程度にして下さいね」