第1章 blue
「智くんって、
話す時と歌う時の声違うね」
笑って彼女が言うもんだから
「うん、よく言われるけどそんなに?」
それが伝染してオイラも笑う。
「話す時の智くんも素敵だけど
歌う時の綺麗な声、凄く好きだなあ」
彼女はどうして
素直に好き、を言えるのだろうか。
柔らかい表情に少しドキッとしたのと
声が好き、と言われて
何故か自分に嫉妬したのと
変な気持ちになった。
「…、」
耳元で彼女の名前を意味もなく呼ぶ。
きみが好きだと言った、
その声で。
無言で耳を押さえ大きな目を
こちらに向けた彼女に
「…わ、ざ、と」
だなんて言ったりして。
「好きなのは声だけ?」
困るきみの顔。
END.
「い、え、その、…手とか、」
「…手、ねえ(どこを触ってやろうか)」