第1章 blue
「...美味しそう」
「だから一緒に食べる?」
いや、違うの、そうじゃなくて。
私がわからず屋の智くんに
悶々としていると、
原因である張本人の彼が
「・・・ふふ、」
とまさかの含み笑い。
「...な、にがおかしいの?」
「うんん、ちゃんが
なかなか気づいてくれないから」
「き、づく?」
「うん、ちゃんのチョコレートが
早く欲しいって催促、全然伝わんねえの」
智くんが優しく笑って首を傾ける。
「もうお腹いっぱいだから
チョコレートは後にして
ちゃんだけの、特別なもの頂戴よ」
最初に見せた無邪気な表情とは違う
大人の笑い方をした智くんが
少しチョコレートをかんで
そのまま私に近づく。
口に広がるのは
苦くて甘い、そんな大人の味。
END.
「智くん...まさかコレ全部…」
「うん、次はミルクチョコ」