第4章 yellow
もうすぐ日付の変わりそうな
遅い時間に突然インターホンがなる。
インターホンの受話器を取ると
「私、開けて」と催促する。
家の扉を開けると久しぶりに会う彼の姿。
珍しく息を切らして
髪が乱れる。
「間に合った…?
…ああ!プレゼント…忘れたあ!」
と両膝をついてうなだれるように
玄関に座り込む。
黙る私に、座ったままの彼が
上目遣いでこちらを見ると
「…誕生日、おめでとう」
と小さく笑う。
プレゼント、本当に用意したんだからね?
なんて、疑ってなんかいないのに
念を押すように言われた。
…もう、充分なのに。
「……いらないよ」
二宮くんが少しだけ驚いたような
表情を見せる。
二宮くんが私のために
選んでくれたのは凄く嬉しいけど
「…二宮くんがいてくれるなら
プレゼントなんていらないよ」
普段走るのが嫌いな貴方が、
私のために焦ったその顔が、
何よりも
嬉しいプレゼントだった。
んふふ、と笑った彼が
冷たい体で私を抱き締めてくれる。
「もっとワガママ言いなさいよ」
そう言われたので今出来る
精一杯のワガママを。
「じゃあもっと…ぎゅっ、てして下さい」
二宮くんが少し黙って
優しく、ぎゅっと力を入れてくれる。
「…このくらい、いつでもするよ」
「…うん、」
二宮くんの香りの中で思った。
待ったりなんてしない、
そんなの嘘だ。
期待して期待して期待して
そしたらやっぱり
二宮くんはちゃんと来てくれた。
なんだ、私
強がってるだけじゃないか。
「ねえ」
二宮くんの香りに酔っていると
優しい声が聞こえた。
「和也スペシャル、あげようか?」
体を離して
犬のような可愛い口が意地悪につり上がると
目を細めて私にゆっくり近づく。
決して瞑ることのない彼のそのまぶたは
まるで生け贄の反応を楽しむ悪い顔。
私は彼に逆らえない。
END.
「二宮くん、誕生日実は1分過ぎていたのですが…」
「あなたがインターホン開けるの遅かったんでしょ?」