第3章 gleen
「雅紀くん、いつもありがとう」
そう言って手渡したのは
彼が前から欲しがっていた手袋。
「えー!なにー!なんでー!
これネットで探したけど売り切れだった!」
よかった、と笑って、
「バレンタイン、だから」そう伝える。
甘いものは沢山貰うだろうから、
せめて違うものの方が…いや、違う。
たぶん、自分の中で
他の人と区別をつけたかっただけ。
じっと、私を見つめる彼が
「チョコレート、くれないの?」と。
「…や、だって雅紀くん、
チョコレートはいっぱい…」
「ちゃんのは?」
「……」
私は冷蔵庫を開けて
まだラッピングのされていない
手作りそれを取り出した。
本当は作ってた。
でも、なんだか渡せなくて。
「ふふ、知ってたよ」
「え?」
「もちろん、手袋はすげえ嬉しいけど
そっちの方がもっと嬉しい!」
「雅紀くん、そんなに甘いの好きだっけ」
「うん、好きだよ。
だってちゃん
チョコレート好きじゃん」
「ん?なんで私の名前がそこで出たのかな」
「え?なんでって
俺がチョコレート食べたら
ちゃんの口の中も甘くなるから
一石二鳥じゃない?」
いっただきまーす、
と口にチョコレートを入れた後
超うまいんですけど、
と微笑んで近付く唇からは
甘い甘い彼の味。
END.
「は!まさかコレ会社の人にあげるやつ?」
「ううん、それは雅紀くん用」
「…雅紀くん用…、いいね!雅紀くん用!」
「え?ああ、そう?」
「ちゃんも雅紀くん用だよね?」
なんだかわからないけど
答えるのが恥ずかしい質問。