第3章 gleen
きみが行きたがっていたカフェ、
きみが好きなケーキ屋さん、
時間も時間だから
ほとんどが閉まっていて
手がかりなんてまるでない。
走り疲れて来た頃に
家の近くの公園で
ブランコに揺れるきみを見つけた。
張りつめていた緊張が
深いため息と共に出ていってくれる。
頭を下げるきみのもとまで走り
「ちゃん」と呼ぶと
辺りも暗いせいか
俺の声にビクッと体を揺らした。
「…雅紀くん」
顔をあげたきみの泣きそうな顔。
「…寒かったでしょ?」
「………」
バツが悪そうに黙りこむ。
「…暖房ね、つけっぱだから
家温かいよ。」
「………」
唇を噛むような仕草は
自分を恥ずかしい、と思う時の
きみのくせ。
「…うち、かえろ?」
右手を差し出して
手を繋ぐ合図。
「……」
何も言わないきみの手を
「…もう」と笑って無理やり繋いだ。
握ったきみの手は冷たくて。
「風邪引くじゃん、ばか」
「…雅紀くんだって」
「俺はいーの、」
そう言うと、またきみがむくれるから
「…もう、また怒るー」
と笑って鼻の先を詰まんでやった。
「い、いたいー」
「あはははは、可愛いじゃん」
「もう、可愛くない」
「ふふふ、はい」
もう一度、手を差し出すと
仕方ない顔をして手を握ってくれた。
「お家帰ったらぬくぬくしようね」
握った手が嬉しくて
足取りを早めると急にきみが口を開く。
「ごめんね雅紀くん」
眉を下げるきみ。
まるで反省した仔猫みたいで。
「俺こそ、ごめんね仔猫ちゃん」
「…仔猫ちゃんて、なに」
「猫みたいだから」
「猫じゃないよ」
「ふふ、お家でいっぱい遊んであげる」
ケンカしても、逃げ出しても
こうやって見つけ出してあげるから。
これが僕らの仲直り。
END.
「はっ、くしゅん」
「ま、雅紀くん大丈夫?」
「…んーん、大丈夫じゃないから
毛布持ってこっちきて」