第1章 blue
「…………」
「…………」
眉をよせては、顔を離してキャンバスを見つめる。
そんな智くんを見るのは
全く飽きない。
智くんは気に入った色が出来ると
何故かそれを爪に残す癖がある。
気に入った色に出会うと
目をキラキラ輝かせて
何も言わずに少しだけそれを筆にとり
爪にサッとつけてしまう。
何をしているかはわからないけど
きっとこれは智くんなりの
こだわりなのかもしれない。
また今日も
爪をジッと眺める私の愛しい図工バカ。
「ちゃんはどれが好き?」
と今日は7本。
左4本、右3本を見せてくれる。
「右手の人差し指、かなあ」
私が答えると彼は満足げに、
「選ぶと思った」と笑う。
「智くんは?」
「オイラはこれ」と右手の中指を見せる。
私が選んだ色とは全く違う色。
「同じじゃないんだ」
と少しガッカリしたように言うと
「うん、これ、
ちゃんの選んだ色と正反対の色。」
と何故か嬉しそうに言われた。
「正反対なのに嬉しそう」
「うんだって、凄くない?
正反対が好きなのに一緒にいれるんだよ。
それって凄く面白いよ」
やっぱり変わった感覚の智くんが
「すげえすげえ」と喜ぶ姿に
綺麗な長い指先についた七色が反応して
キラキラ輝いて見える。
それはまた新しい、智くんだけの色。
END.
「その手、ご飯どうするの?」
「まだ洗えないから、あーんして」