第2章 red
いつものように連絡しただけだった。
すると電話の向こうの彼女が
いつもより元気のないような、
「ちゃん?体調悪いの?」
当てずっぽうで聞いてみたけど
「…ああ、少しね、熱があるだけ」と
笑うきみ。
すぐに電話を切って
彼女の家へ慌てて向かう。
ドアが開くと
大きめのスウェットを着た彼女が
「翔くん!なんで」
と驚いたようにこちらを見る。
もしかしなくてもそれ、
俺のスウェットじゃね?て
胸を躍らせてる場合じゃない。
「…なんでって、当たり前でしょ
大丈夫?」
ふふ、と笑うきみは
「平気だよ、ただの熱だもん」と
いつも以上にフワフワして見えた。
「…ほら、ここじゃ寒いから」
ヨレヨレと歩く彼女を支えながら
リビングへと誘導する。
ありがとう、と微笑み
上目遣いで俺を見るきみの瞳が潤んで。
ダメだとわかっていても
自分の服を着た頬の染まる君を
見せられちゃあ、
保った理性も吹っ飛びそうになる。
熱い身体を抱いて
ベッドに寝かせると
「…翔くん、明日は?」
「明日は昼過ぎから」
こんな時でも彼女の一番は俺のことで。
その昔から変わらない優しさに
胸が熱くなる。
「じゃあ今日は早く帰って寝なきゃ
風邪、移るといけないから」
口を押さえて話す彼女、
健気な姿につい笑ってしまった。
「…ちゃん、
今日は泊まろうかな」
手を握ると彼女の目尻に
溜まった涙。
「…大丈夫?」
「大丈夫、変なことは致しません」
「…ふふ、違うよそうじゃない」
「大丈夫、薬飲むし、マスクもする。
…でも今日は一緒にいたい」
うん、と笑った彼女の額に
唇を近づけた。
早く治りますように、の
思いを込めて。
END.
「…翔くん、」
隣でマスクをして眠る彼。
名前を呼んでも気付かない。
「………好き、大好き」
体調の悪いときに
優しくされると涙もろくなるのは
なんでだろう。
また彼を想う気持ちが大きくなった夜。