第5章 終わり。
翌朝起きると、いつものいい香りがした。
彼女はいつも通り、おはようございますと言っていて振り出しに戻った気がした。
木ノ葉に殺された両親。
木ノ葉に消された記憶。
自分が壊した彼女の幸せという定義。
小さな体をぎゅっと抱きしめる。
涙が出そうになる。
優しく、どうしましたか?と言うにただ、離れないように縛り付けるように抱きしめた。
「」
「旦那様、私考えました。向き合うって旦那様の言葉の意味。」
「うん」
「それで、気がついたんです」
がか細く呟く。
「たぶん、旦那様を好いたことは一度も無いのだと」
「うん…」
「だって、旦那様は主で、私は下僕ですから、このお家のたった一人の使用人ですから。」
辻褄が合ってくる。
無駄なことを言わない頼らない。
「旦那様の為に私が出来ることは、邪魔にならないこと、不快にさせないこと、貴方に迷惑をかけないこと。ただ、それだけですから。」
顔を上げを見ると困ったように微笑む。
「向き合うとか、変だなと思ったんですよ。そんな必要ありませんから、貴方の一生の汚点で重荷ですからね、私」
からりと笑う。
「感謝はしてますよ、いっぱい沢山感謝してます。私にこんなに自由と幸せをくれる旦那様に、返しきれない程。」
『ダンゾウさま、自由とはなんですか』
『辛く苦しい事だ』
『ダンゾウさま、はなんですか?』
『此処でしか生きられぬ可哀想な娘だ』
『どうして、?』
『それに疑問を持つな、そうだから、だ』
「旦那様は旦那様で良いのですよ、何も変わる必要などございません。」