第14章 懐かしさと。
お散歩をしていると頭の中でぼんやりと何かがもやもやと動いている。
「、どうしたの?ぼんやりして」
「⋯えぇ、あの⋯なんだか、なんだか、思い出しそうなんです」
「ほう、どんなことだい?」
はにこりと、微笑んだまま固まった。むぅっと眉間を寄せて口を窄めて唸っていた。
その表情がおかしくてくすくすと笑っていると、は立ち止まり苦笑いを浮かべた。
あぁ、思い出したことがあるらしい。
「雨の日の事ですよ」
は眉を下げて微笑んでいた。
首を傾げるサクモに思い出すように口を開く。
「私が⋯傘を忘れて、散歩に出て帰れずに居たら、旦那様が迎えに来てくださったんですよ」
「へぇ⋯」
「お迎えに来たと言った旦那様は傘を持ってなくて、私達は雨に濡れながら走って家まで帰ったのですよ」
「風邪は引かなかったのかい?」
「はい、旦那様にお風呂に入りなさいと言われて⋯旦那様もすぐにお風呂に入って、ホカホカとしていました」
「あぁ、それはいい思い出だね」
はい、と言ったは少し照れくさそうだった。
「でも、思い出せないのです、その、旦那様と私が呼ぶ方の顔も声も⋯なにも⋯」
「そうか⋯」
「あと、思い出したのは、ナルトが居なくて一人の部屋で寂しいって時に、誰か会いに来てくれたんです。」
サクモはめをくりくりとさせた。
そう、サクモは全然知らないこと。