第12章 やっぱり。
お風呂に行くと、はしゃぐに手を焼く。キャッキャと狭い風呂を暴れ回るから、静かにしなさいと怒るまで、大きな尻尾を振り回し水飛沫で遊ぶから。
「ねぇーサクモ、今日も、おんなじ誰かいるの」
「新しい監督さんかな」
「そうなの?サクモは知ってるの?」
「んー多分としか、言えないかなぁ」
「そうなの、リンちゃんが監督にはならないの?」
は不貞腐れたように呟くから愛らしく、なる事は無いよ、と意地悪をしてしまう。
ブーブーと言いながらも大人しく洗われる大きな彼女に少し胸が痛む。
ドライヤーが好きなは大人しく微睡みながら鼻歌を歌っていた。
乾かし終わると毛ずくろいをする姿を見て、ただ愛おしく思う。
この子が、死ぬという選択をしないための選択だったのだから。
「なぁに?サクモ、ブラシしてくれるの?」
「いいのかい?いつもは嫌がるのに」
「うん!ダンゾウ様に会えるから!綺麗になりたいのですよ!」
「も女の子だね」
えへへとはしゃぐ彼女。
その後も今日は頑張るからたくさん食べていくだとか、いい天気だから雑草を抜いてくるだとか、彼女は毎日幸せそうだった。
女の子の姿でなくとも。
日がな一日は読書をするサクモの隣で眠っているか家の周りを鎖が許す限りで散歩をしている。
蝶々を追いかけてみたり、涼んでみたり、彼女は退屈をすることは無かった。
日が落ちると、ダンゾウの気配には耳を立てて尻尾を振って出迎える。
ダンゾウだけが持っている鍵で鎖から解き放たれる。
ぴたりと、彼の隣に立つ。
人の姿になると、は髪の毛を括り、微笑む。
「ダンゾウ様、お待たせしました参りましょう」
「あぁ」
そう言って彼女は忍具を持たされる。
殺すために、何も守らない彼女の刃。
綺麗に微笑んでいた。
は、時々なにか欲しいものはあるか?とダンゾウに聞かれるのが好きだった。
何も無いですよと、言えば貴方は安心した顔をするから。
その意味は分からないが、彼女は満足だった。その手が自分の手を引いてくれる今の時間が。
どこか遠い夢のように感じる。
さぁ、人狼のお仕事のお時間だ。