第9章 愛痛い。
「化け物は化け物にってか」
カカシをナルトに押し付け、は耳や尻尾を出し逆立て男の前に立つ。
「訂正してください。今の言葉を撤回してください!」
「ば、バケモノが!」
「私は、化け物です!けれど、この子は⋯この子は、私とは違う、愛された⋯愛される子です!!!」
は悔しげに涙を浮かべ、歯ぎしりをして怯える男から目をふせる。カカシに飛びつき、真っ直ぐ瞳を見つめる。
そっと、布越しにキスをして「ルールを破ってはなりませんよ」と告げ、ナルトを連れて立ち去る。
イタチは肩を揺らしてしゃがみこみ、カカシは額を抑えた。
あの娘は突然そういうことをするから。
想像もつかなかったことをするからおかしくて⋯愛おしい。
「先輩、大丈夫なんですか?」
「いやー可愛いよねぇ俺の婚約者」
「そうではなく!」
「まぁ、今から少しその話をしに行くつもりだよ」
「俺達が命じられたのは護衛ではありませんからね。監視と報告です。」
イタチの念の押し方に目を丸くして微笑む。可愛い後輩もどうやら味方らしい。
「それじゃ、行ってくると⋯ぁ」
歩き出したカカシが振り返り、イタチに問う。
「あんまり、に接近したらだめだよー?うちの婚約者さん優しさにコロりだから、ね?イタチくん」
「⋯気をつけますね」
「返事としては不十分だけどまぁいいかな」
「髪の毛、短くすれば化け物っぽくなくなると思ったらしいですよ」
苦笑いを浮かべるイタチにカカシはくしゃりと笑う。あぁ、はナルトには甘いんだ。
誰より甘い。そして、大好きで、愛している。あの、うずまきナルトは彼女にとって宝物の様なのだろう。
だから、男に立ち向かう。
人の言葉などに刃向かうことなどない、けれど⋯あの子は彼女の唯一の天使で宝物だから。
「⋯そうか」
ひらりと手を翻し背を向けて歩き出す。
宝物を優しく守れるように、あの子の傍に居られる事か彼女はきっと、物凄く幸せに違いない。