第21章 本丸大炎上【刀剣 蜻蛉切】
「母ちゃん、本当に蜻蛉切も来てくれるの??」
らんらんと目を輝かせる息子に、
「自分でよろしければ…」と穏やかな槍は微笑んだ。
今日は5歳になる息子の袴着の為、久し振りに現世へと戻る。
わんぱく盛りで、いつもは厚や愛染なんかと一緒に本丸中を駆け回る横着坊も、歌仙のお説教をくらいながら、普段は着ない袴を着せられてしまえば、そりゃもう足を畳に縫い付けられてしまったかの様に大人しくなった。
「もし、よろしければ守り刀に家の弟達を使って下さいませんか?」
一期一振の申し出に首を傾げる息子。
「否、一期。それは…まずいかも」
現世に彼等本体を持って行く事がそもそもダメだし、
仮にそこがOKだとしても、この横着坊にいくら短刀といえど刀を持たせるなんて、怖い。怖い。
私がやんわりと止めれば、
「誰かが着いてきてくれるけど誰がいいか?って一兄が聞いてるぜ」
私の言葉はスルーで息子に分かるように砕いて薬研が説明をする。
そして、その息子は薬研の説明に
「じゃぁ、蜻蛉切‼」
なんて、とんでもない事を言ってのけた。
「槍を懐に入れようなんて、こいつは驚きだ」
鶴丸の言葉に、皆から笑みが溢れる。
そうだね、5歳の息子に守り刀の意味なんかわかるわけないよね。