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いとし、いとし【短編集】

第8章 手のひらの効果【krk 桜井良】


「毎月、大変ですね…。変わってあげたい」

良の優しい言葉に胸が暖かくなる。


私は彼の、こうゆう所が好きだ。

良は優しくて、芯が強い。

いつもは『すみません‼すみません‼』なんてペコペコ謝っているけど、

おどおどしてる印象が強いけど、


それも含めて大好きだ。




今も、

「朝食はちゃんと食べた?」とか、
「薬は飲んだ?」とか、

私を心配して、ちょっとお母さんみたいな事を聞いてくる良。

そんな彼に、
つい、クスリと笑いを溢して、


「大丈夫だよ。もうすぐ薬も効いてくるはずだから…」

と、答えた。


その答えに良は静かに首を横に振る。



「毎月、結依の辛そうな姿を見るのも、僕としては辛いんです。何も出来なくて、本当…すみません」


そう、柔らかく微笑んで、
まるで慈しむように、私の頭をふわりと撫でた。


ちょ…ちょっと待って、良。


そんな事されちゃうと、
私の心臓、もたなくなるよ。


謝るなら、いつもみたいに『すみません‼すみません‼』ってペコペコ謝ってくれないと…。




「『手当て』って、痛いところに手を当てると少し楽になるから『手当て』って言うそうです。僕の手じゃ気休めだけど…。早く薬が効けばいいのに…」



尚も、私の頭を撫で続ける良に、

顔は熱いし、
心臓はバクバクするし、
もう、どうしたらいいか分からない。


いつの間にか消えていた三重苦の痛み。


でも、その変わりに、

顔や身体に灯る熱と、
うるさいくらいにバクバクと鳴る、胸の痛みが、

私の身体に残っていた。
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