• テキストサイズ

いとし、いとし【短編集】

第4章 真っ直ぐな彼【krk 早川充洋】


しきりに話し掛けてきて、まとわりつく男性に、いい加減、苦情でも口にしようかと顔を上げると、


「結依さーん‼」

と、私を呼ぶ充洋くんの声。


こちらへ駆け寄って来た充洋くんは、一瞬で状況を察知したらしく。


「結依さんは、お(れ)の彼女ですか(ら)‼」

と、私の肩を引き寄せた。


「なんだよコイツ‼何言ってるかわかんねぇよ‼」

と先程の男性は去っていく。





「ありがとう。充洋くん」

助けてくれた彼に、素直にお礼を述べた。

それなのに彼は、
予想に反して、

大きな身体を半分に折り曲げて


「すいませんでした‼」

と、謝る。


「お(れ)が、ちゃんと繋いで(れ)ば、はぐ(れ)なかったのに…。本当、すみませんでした。何にもさ(れ)てませんか?大丈夫ですか?」

いつもより早口で、必死に話す彼。

心の底から心配してくれていた…

そんな思いが伝わってくる。

「大丈夫だよ。私も、ごめんね。見つけてくれてありがとう」

そう言えば、

「あた(り)前、ですよ‼」

と、ニカリとした笑顔が返ってくる。


ケータイが繋がらなくても、彼は私を見つけてくれた。
それがなんだか嬉しかった。


「さぁ、行きましょう‼先輩達は先に行きました」


そう言って、差し出された手に自分の手を重ねる。


今度ははぐれてしまわないように、
しっかりと指と指を絡めて、
夏祭りの賑わいの中へ、
私達は歩いていった。

/ 172ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp