第4章 真っ直ぐな彼【krk 早川充洋】
しきりに話し掛けてきて、まとわりつく男性に、いい加減、苦情でも口にしようかと顔を上げると、
「結依さーん‼」
と、私を呼ぶ充洋くんの声。
こちらへ駆け寄って来た充洋くんは、一瞬で状況を察知したらしく。
「結依さんは、お(れ)の彼女ですか(ら)‼」
と、私の肩を引き寄せた。
「なんだよコイツ‼何言ってるかわかんねぇよ‼」
と先程の男性は去っていく。
「ありがとう。充洋くん」
助けてくれた彼に、素直にお礼を述べた。
それなのに彼は、
予想に反して、
大きな身体を半分に折り曲げて
「すいませんでした‼」
と、謝る。
「お(れ)が、ちゃんと繋いで(れ)ば、はぐ(れ)なかったのに…。本当、すみませんでした。何にもさ(れ)てませんか?大丈夫ですか?」
いつもより早口で、必死に話す彼。
心の底から心配してくれていた…
そんな思いが伝わってくる。
「大丈夫だよ。私も、ごめんね。見つけてくれてありがとう」
そう言えば、
「あた(り)前、ですよ‼」
と、ニカリとした笑顔が返ってくる。
ケータイが繋がらなくても、彼は私を見つけてくれた。
それがなんだか嬉しかった。
「さぁ、行きましょう‼先輩達は先に行きました」
そう言って、差し出された手に自分の手を重ねる。
今度ははぐれてしまわないように、
しっかりと指と指を絡めて、
夏祭りの賑わいの中へ、
私達は歩いていった。