第42章 毒の回った苦い春【hq 照島遊児】
試合を『アソビ』だと言う彼は、私とのひとときを『運動』とか『スポーツ』と表現する。
高校生らしからぬ時の過ごし方ばかりで、私の不満は溜まる一方。
その時間は主に、両親不在の私の家だったのだが、最近では家だけでは飽きたらず、部室なんかにも呼び出されたりもするので、溜まりに溜まった不満を昼休みにぶつけた。
『何が悪いんだ?』とでも言わんばかりに面倒そうな態度を示した彼。
その彼に、「だったら放課後に体育館でしている事は何?」と尋ねたら、「部活」「バレー」と至極真っ当な返事が返って来て、更にムカついた。
彼にとって、私は何なんだろう?
だから、今日は待っててあげない。
体育館なんか寄らない。
そう思っていたのに、足が向く私は、酷く毒されているんだと思う…。
「結局、待ってんじゃん!!ありがとな」
私の腰に手を当て、グイと自分の方へ引き寄せ、
「別にオマエだってキライじゃないだろ?」
と耳元で囁く。
頭に響くその声に、
触れられている手のひらに、
私の判断力は鈍っていく。
「オマエん家行っていい?」
その囁きに抗えず、
「いいだろ?結依?」
私は首を縦に振った。
また今日も、『スポーツ』の時間が始まる。