第29章 解り合える気がした【刀剣 山姥切国広】
「…えっ?あっ…。折…る?」
言われた事の意味を上手く理解出来なくて、そう返せば、
「…ふっ」と自嘲するような笑みを溢す山姥切。
この笑みは、どこかで見たことがある。
これは…
幼い頃からずっと、外見も頭の出来も良い兄と比べられて、『ダメだ』『ダメだ』『平凡だ』と言われ続けて来た私が溢すそれと一緒。
何事にも自信が無くて、
自分が嫌いで。
本当に大嫌いで。
でも、やっぱり、誰かに認めて欲しくて…。
それを、声にあげる事は出来なくて…。
結局、『自分なんか…』と溢す自嘲。
山姥切は私なんかと違って、こんなに綺麗なのに…。
「…気に入らないなんて、とんでも無いです。とても綺麗なので、思わず…。あの…山姥切さんが嫌でなければ宜しくお願いします」
先程、こんのすけに言われた通り契約を交わす為に手のひらをだした。
「綺麗とか言うな…」
被っている布をグイっと引っ張って、
顔を隠しながら、山姥切は私の手を取る。
男士が口上を述べて、
審神者が手のひらを出して、
その手を男士が取ったら契約成立。
無事に契約を結べたみたいだ。
「不束者ですが、これから宜しくお願いします」
「ああ」
こちらを見て返事をしてくれたかと思ったら、再び布を深く被る彼。
「全く…。最初の一振に俺を選ぶなんて変わった主だ…」
そう言って、再び「ふっ…」と溢された自嘲の笑みに、私は目が離せないでいた。