第24章 剥き出しの正義は辛い【krk 宮地清志】
「なんで…なんで、お前はそうなんだよ‼」
再び、清志くんが声を荒げる。
「お前は悪くねーだろう?なんで謝る?簡単に謝ってんじゃねーよ。そんなんだから、こうゆう目に会うんだろーが‼嫌なら嫌って言えよ‼違うなら違うって言え‼ちゃんと言い返せ‼悪くないのに謝ってんじゃねーよ‼」
清志くんの言う事は最もなのかもしれない。
確かに先程の事を考えれば、謝るべきは私ではないのかもしれない。
どんな時でも自分の意志を貫き通す彼ならば、
強い正義感を持つ彼ならば、
それは、当然だろう…。
だけど…
そうは出来ない人間だっている。
私の様に、
自身の正義や信念よりも、
極力、波風を立てずに過ごしたい人間だっている…。
輪の中心よりも
端の方で、そっと、穏やかに過ごしたい人間だっている…。
それに…
今回、
私は何もしていなくても、
私の存在が、結果的に、この先輩を傷つけて、追い詰めてしまった。
私が絶対的に悪くないとは言い難い。
だから、清志くんはもう、
私の為に怒っちゃダメ。
ダメ…なのに…
「で、でも…」
「でも、じゃねー…」
「もう‼ もう、いいわよ‼」
これ以上は、もうやめて欲しい。言っちゃダメと思った清志くんの言葉を遮ったのは、
先程まで、私を蔑むように見下ろしていた綺麗な先輩だった。
「あんたなんかとは別れる‼」
そう叫んで、泣きながら去って行く先輩。
それを追いかける事もせず、清志くんは私の前にしゃがみこんだ。
まるで反発し合う磁石の様に、裕ちゃんが立ち上がり、「俺、部活行くわ」と立ち去る。
「コイツ送ってから行く」
そう言う清志くんに、
「兄貴、怒鳴るなよ」と一言残して。
「結依」
不機嫌そうに眉間に皺を寄せた顔。
その顔は苦手だ…。
「清志くん…先輩…」
「ほっとけ」
「でも…」
「知るか、あんな女…卑怯な奴は嫌いだ」
「でも、彼女なんじゃ…」
「うるせー‼帰るぞ‼」
私なんかのせいで、別れてほしくなんかない。
誰かを傷つけてほしくない。
そう言いたいのに、
弱い私は言う事が出来なくて…
私を引っ張り上げたそのまま、腕を引きながら歩く清志くんに倣って、
ただ、ただ、
地面を見つめながら歩いていた。