第4章 彩花。
「あの娘の心をこれ以上壊さないで頂きたい、私からはそれだけです」
勝手に壊れたと言えばそうだろう、だから、あの娘に近づかないでほしい。
それだけならまだ、未来があるのだから。
戩華は深く溜息をつく。
旺季が愛した義理の娘。
瑠花が愛した娘。
邵可の姉。
都合がよかった、ただそれだけだった。
チクタクチクタクと鳴り響く部屋。旺季は頭を抱えたままだった。
栗花落も戻らず面白くなかった。
『その言葉は誰もが聞きたくはない』
ひどく突き放された言葉。
軽蔑したような瞳。
「妃、か⋯」
妾と対して変わらないと思っていた。
価値は違えど、変わらぬと。
栗花落の騒がしい声にふと、入り口を見る。
藍家の色を纏う妃。
真っ赤な頬に真っ白の髪の毛をふわりと揺らして現れる。
目を見開き壁から離れると転びそうになる。踏ん張ると、後ろから賑やかな声が響く。
「王様、どうか先に王都にお戻りください。見張りなら邵可一人で充分でございます。お仕事が滞っては国の一大事ですから」
膝をつこうとして床に倒れる。
ゆらりと、起き上がり座り込む。旺季が駆けつけると驚いていた。
「千代、お前っ」
「私は人では考えられない熱を出しているんですって」
くすくすと笑う。