第2章 彩香。
夕食の時間になると帰ってくる清苑公子。
千代は劉輝を抱き抱えて微笑む。
女官の服を着て、せっせと二人の世話をする。
「千代!」
「何でしょうか、劉輝様、あらまぁ、頬にかぼちゃが」
千代の膝で楽しげにする劉輝。
「きょうはあにうえにあえるのか?」
「勿論です、千代めは嘘をつきません」
劉輝は知っている!と嬉しそうに笑顔を振りまく。千代は母親を殺したかもしれないというのに、その膝の上で楽しげにしていた。
「千代、父上とはなんなのだ?」
カボチャの甘露煮をもぐもぐ食べながら言う。
「貴方の父上様はとても、孤独なお方です。」
「こ、どく?それは、あまり、たのしくないのだ」
優しく劉輝の頭を撫でる。
「えぇ、そうですね。けれどその場所を望んだのは劉輝の父上様です。あの方は後悔をしていませんの。だから、どうか、劉輝貴方と清苑兄上は、孤独を選ぶのではなく、大好きは大好きのまま二人で同じ場所を見て孤独にならないように」
「んぅ⋯よくわからないのだ、でも、せーえん兄上はずっと大好きなのだ!」
「それは、とても素晴らしい事ですよ、だからどうか、なにがあっても兄上を大好きでありますよう。この千代からのお願いです」
「千代、千代も大好きなのだ⋯だから、だから、かぼちゃおいしいのだ!」
劉輝の少ない言葉で千代は涙を流していた。王を孤独と称して、そうならぬよう案じていた。
「ほら、劉輝、兄上のおかえりですよ」
手を拭いてやると、千代の膝からぴょんと降りて出迎えに来る。最初から知っていたように平然と振る舞う。
「おかえりなのだ!」
「劉輝!いい子にしていたか?」
「はい!今日のごはんは千代と取ってきたかぼちゃなのです!えへへ」
何処から取ってきたんだと思ったが弟は嬉しそうなので言わずにいた。
「おかえりなさいませ。清苑公子。」
「⋯⋯劉輝、兄上と湯浴みに行こう」
「えっ、よいのですか!」
「あぁ、勿論だ、その後は絵本を読んでやろう、ん?」
「えへへ、今日はいっぱい兄上と一緒にいられるのですね!」
ぎゅっと抱きつく弟。
ちらりと千代を見るとそこには嬉しそうに見つめていた。
視線が合えば会釈をして下がる。