第11章 才華。
千代の髪を掴みくるくると指にかけて遊ぶ戩華。
何が楽しいのか、まぁいいかと壁に寄りかかりうつらうつらしているとお待たせしましたと言う声が聞こえびくりとする。
どうやら、隣のお客さんだったらしい。
「なんだ?寝不足か」
「いえ、そういう訳ではないのですが⋯」
目を擦ると、戩華が腕をつかむ。
「ならなんだ、俺といる時にうたた寝をする程なにがある?」
「なんですか、そんなに突っかかって⋯」
「⋯⋯でーとというやつだろう?これは」
「いえ、誘拐ですよ」
ふああっと、欠伸をしてうつらうつらと船を漕ぐ。
戩華の香りが何処か懐かしく近くで嗅ぐと、胸騒ぎの興奮と緊張と何処か安心する感覚に襲われ眠たくなる。
「んぅ⋯戩華」
「なんだ」
「貴方ほど世話のかかる貴方は居ないわね」
「仕方あるまい、お前に惚れているのだからな」
「おかしな⋯戯言⋯です」
運ばれてくるまでの数十分、千代は眠っていた。
すやすややと、日に当たりながら。
「⋯⋯困ったのはお前だ」