第10章 彩稼。
そこには、よく見かけていた宝箱。
寝巻きから鍵を取り出し一つずつ鍵を開けていく。
「千代は、随分昔から、戩華王を愛していた。死という当たり前の宿命を千代はな、許さなかった、まだ、彼は何も得ていないと沢山の世界を周り、彼を幸せにする旅をしていた。いつからか、彼を好きかどうかもわからなくなり、ただ、彼の幸せだけを望むようになってしまったんじゃ」
「か、ぁさま、が?」
「あぁそうじゃ、何度も王の剣で死に、何度も王をただ幸せにするために沢山の自分の幸せを捨てた。」
カチャリカチャリと開けていく。
全ての鍵を開けると、瑠花は蒼姫の頭を撫でてる。
「ああ、大当たりじゃな蒼姫。良くやった、偉いぞ」
「これがあれば、母様はもどって?」
「これはな、永遠に誰にも触れさせてはならぬ。例え劉輝王にも、栗花落姫にも、もちろん父にもじゃ」
「⋯どう、して?」
「これは、もう、タダの石ころじゃからだ、触らせてはならぬ。妾が預からせて貰っても良いか?」
「⋯これは、母様の心なんでしょう?」
旅に出た時のまま無垢な瞳。
「⋯⋯ああ、そうじゃ」
「こんな、こんなに置いて行ってしまってるわ!」
「あぁ、千代はそれでも、父に褒められて嬉しそうに逝ったぞ」
「そんな、そんなわけないわ!と、父様が、母様のために行けと言ったのに、そんなおかしいわ!」
「おかしいことは無い、千代が望んだ通りに出来た。あの娘は良くやった、戩華をよく幸せのシナリオに導いた」
「こんな、こんなのおかしい⋯おかしい⋯のに、なんでです、私の旅は無駄だったのですか」
「いつか、別のどこかで運が良ければまた、出会える、蒼姫。千代を引き止められずすまなかった」
戩華は蒼姫がかかえる宝箱の中身を見ても、タダの石ころにしか見えなかった。ぎっしりと詰まったそれ。
自分が娘にそんなものを取りに行けと言った記憶はない。
静蘭は疲れたようにベッドの脇に伏せて眠る。