第8章 私の相手は貴方だけ
なんて、左手が駄目ならと思っただけだったが
「え」
と戸惑う名の様子と
「左手は結婚相手、右手は彼氏用だよ東峰」
と隣の机の生徒が口を挟む。そして、その言葉に二人して赤くなり、
「い、一応右手にしとくねっ」
「そ、そうだな。左手はな、結婚だからな」
とギクシャクしてしまう。指輪事件を仕切り直してとうとう本番。なんと
「トリとは聞いてない」
「ごめん・・・」
順番は大トリ。先程から気になっている先に出ていく組へのお付き合いはいつから?どこが好きですか?等のベタな質問が自分にも来たらとひやひやしながら、リハーサルした通りの経路を思い出しつつ先に花嫁を待つために東峰が呼ばれステージへ。バレー部のメンバーが居るのも分かり緊張しつつも一息ついた後、とうとう花嫁の登場に女子からも男子からも黄色い声があがる。白い裾を引きずりながら目の前に来る名はとてもとても綺麗で、顔を合わすとお互い笑顔になりメインステージにあがる、その際東峰が裾を踏んで本当に転びそうになるのを名は隣で楽しそうに受け止め、照れ隠しの笑顔を見せつつ一礼して入場が終わった。
「いやぁ、見事なドレスですね!」
司会の質問はドレスについてばかりだったので東峰が安堵していると
「彼氏さんも見とれちゃいますよね!」
と突然自分に話をふられ大慌てしながら
「いいいい、違っ、彼氏じゃない、彼氏じゃ。」
「あれー違うんですか?」
いや、そのとたじろぐ東峰の横で
「今は違うんです」
と笑い返す名に会場にどよめきが起こる。
「じゃぁ予定はあるってことですか?!」
「ふふ、内緒です」
その後はどんな質問がきたか覚えてないがその言葉だけが妙に残り、その後、ラストランウェイに参加した全ての参加者が出てきて退場し、最後に自分達が退場してショーは終わった。緊張はしたがなんだか隣でずっと綺麗に笑う名に、バレー部の皆からもカッコ良かった。との言葉をもらい、被服専攻の子達からも良かったとの言葉をもらい、皆が笑顔で居るこの時間が幸せなのかなと思っていた。そして、ショーの後、名と二人きりのタイミングで
「あの言葉さ」
と本題をふると、名は真っ赤になり、