第18章 3人の容疑者──bourbon
それからしばらくした頃。
私は昴さんと一緒に住むことに慣れ始め、お母さんが毎週のように来るのにも慣れて来た頃の夜。
「えっ!?新一に告白されたぁ!?」
私はその知らせを受け、驚愕していた。電話越しに聞こえる少し照れたような声は蘭ちゃんだ。
『は、はい……。ロンドンのビッグベンの前で……』
「うわー、キザなことするぅ。……で?蘭ちゃんは何て答えたの?」
完全に恋バナに入る2人の電話。
私は野次馬根性丸出しで蘭ちゃんに訊いた。
『え……っと、それが……』
「ん?」
『……まだ答えてなくて……』
「ええ〜?何で?新一、あんなだけど結構イイと思うけどな……」
『い、いえっ!新一が嫌とかじゃなくて……。口にしたら、何か幸せが逃げちゃいそうで怖くて……』
そう話す蘭ちゃんの声は不安からか、少し震えていた。私は小さく笑う。
「……そか。気持ちは分からなくもないからさ。何かあったらいつでも電話してきていいからね?直接会うでもいいし」
『……! ──はい!」
元気に返事をした蘭ちゃんにくすくすと笑いながら電話を切る。
ふと、私は窓の外を見つめた。
「月……」
深い紺色の空に、青白く光る月。
「……そういえば、快斗と会った時もこんなだったな」
そして目を瞑る。今でも覚えている──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それは10年前。
私が工藤家と米花町に馴染んできた頃だった。
帰り道も覚え、1人で家に帰っていると──
「……え」
キキキィ!!!
「きゃあっ!」
信号無視のトラックが私目がけて突っ込んできた。
ぶつかる──!そう思った矢先、不意に体が横に転がった。
「えっ、わっ!」
私を突っ転ばせたのは、新一と同じくらいの少年。
「イテテ……大丈夫か!?」
「う、うん……って君の方が怪我してるじゃん!ちょっとこっち来て」
そう言って半ば無理やりに道の端へ座らせる。
私を庇ってくれた少年は、道に転がったせいかあちこちに擦り傷を作っていた。
「あーあ……無茶しちゃダメだよ?」
そう言うと、少年は不本意な顔をした。「でも……」私はペタッと最後の絆創膏を貼り付けてから言った。
「助けてくれてありがと!」
そう言ってニコッと笑うと、少年もニッと笑って返してくれた。