第3章 シラユキと白雪
「お前の祖父母は…健在か?」
「えっ?…うん二人とも元気だよ」
「可愛いがられたんだろうな」
白雪と幸せそうに過ごす
祖父母を想像し胸に苦さが湧く
「うん!二人とも
とっても可愛いがってくれたよ」
にこにこと笑いながら
思い出すように
遠くを見つめる白雪
「…ごめんな」
「なっ…なんで政宗が謝るの?」
目を見開いて
心底驚いた表情をする
「お前が…
俺の為に諦めた物の一つだろ」
「!」
絶句する白雪
家族も友も
自分の生きてきた
時間さえも全てを棄てて
白雪は戻ってきた
想像を絶する
苦悩があった筈だ
いや今もって尚
苦しんでいるのかもしれない
俺の知らぬ処で
涙を流すのか?
苦い表情の政宗に
白雪が口を開く
「そんな風に思ってたの?
政宗が謝ることじゃないよ
誰と何処で生きるか
決めたのは私だから」
真っ直ぐ
政宗を見つめ言葉を紡ぐ
「確かにもう両親や兄妹
祖父母には会えない
でも…政宗がいる…
家族を諦めた訳じゃない」
凛とした瞳が
政宗の胸に募る罪悪感を
洗い流していく
「政宗が私の家族」
「っ…白雪…」
胸を鷲掴みされたように
苦しくて息が出来ない
「…おま…え」
(くそっ…かっこ悪ぃ)
余裕がない心を
知られたくないのに
気の効いた言葉が出てこない
「…しょうがねぇな
なってやる俺がお前の家族だ」
顔に熱が集り照れ臭くて
しかめっ面になる
「あ…政宗
照れてる!可愛い」
ぐにっと頬を摘まむ
「いたたっ…ごめんなしゃい」
指摘され無理矢理
平静を装った
「今から作るか?」
「なにを?」
「家族」
「え?」
「俺とお前の」
「!」
意味を察して
盛大に顔を赤らめた白雪が
何か言いだす前に
顎をすくい深く口付ける
「っ…はぁっ…んん」
吐息さえ
奪うように重ね合う
燻っていた熱が
再び頭をもたげて抗えない
身を焼くような熱に
翻弄され支配される
躰を支えきれなくなった白雪が
膝を折るように崩れる
片手で支えてやりながら
大木の元に追い込んだ
幹に背を預け
蕩けた表情で
政宗だけを瞳に写す