• テキストサイズ

文スト夢倉庫

第3章 ポオ/たまにはこんな純愛小説



自宅へ戻り、早速執筆に掛るものの…


あれ。
おかしいな。
違う、こんなんじゃない。


そんなことの繰り返しで。
部屋の中には丸められた原稿用紙が散乱していた。


何でだろう。
人を殺す手段も動機も溢れんばかりに閃き書き連ねることが出来るのに



彼女に伝えたい愛の言葉は
どうしてこうも…

上手く文章にならない




気が付けば、何度、彼女を作中で殺してしまっただろう




「こんなハズじゃ無かったのである…こんなはずじゃ…」


ポタポタと零れる涙を
カールは心配そうに眺めていた










「ま、こんな事になるだろーとは思ったけどね。」




涙を零したまま眠るポオの前にふらりと現れた名探偵。

机の近くに散乱していた原稿用紙を集め、一通り目を通すと、その中のいくつかをピックアップして纏めた。


「やぁカール。ちょっとこれ借りてくから」


カールにニヤリと笑いかけ、乱歩はその部屋を後にした。












「ん…、寝て、しまったであるか…?」


ゆっくりと身体を起こすと、カールがすり寄って来た。
カールの暖かみを感じるとほっとする。

外はもう暗いようだけど、一体どのくらい寝ていたのか。
最近寝てなかったからな。
そろそろ先程の続きを…

………?



ない。
書きかけの原稿がないである!!?



「か…カール! 大変である!! 原稿が…!!」


何がどうなっているのがパニックに陥っていると
ふいに玄関のインターホンが鳴る。

驚きつつ、そっと玄関を覗いてみると
そこには彼女が立っていた。


「な…なんで月尾さんがここに…?」


訳が分からないこの状況をひとまず置いといて。
彼女の待つ玄関へと走った。



「…あ!ポオさん!! すみません、いきなり訪ねてしまって…」
「い、いや…、それより、その、ど、どうぞ…である」


平常心…平常心を保つのである…
吾輩は務めて冷静に、彼女をリビングまで案内した。




/ 102ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp