Sweet Life 〜僕らの甘い時間〜【気象系BL】
第2章 僕の声
最後のラジオ収録を終え、スマホを確認すると、赤色のランプが点滅していた。
着信を知らせるランプは、メンバー毎に色分けしてあるから、それが翔くんからの着信だということはすぐに分かった。
なんだろう…、急ぎの用事かな?
僕は慣れない手つきでスマホをスワイプすると、メールアプリを開いた。
『14年間お疲れさまでした』
『ラジオから流れるあなたの飾らない声が大好きでした』
って、何コレ…
こんなこと、わざわざメールしてこなくても、直接言ってくれればいいのに…
どうせマンションに帰れば顔合わすんだから…
変な翔くん…
なんて思いながら、返事を返そうと見下ろしたスマホの画面にポツンと落ちる滴。
えっ、僕泣いてる?
嘘だよ、こんなメッセージぐらいで僕泣いたりしないよ…
でも滴は次から次へと画面に落ちて…
僕は返信をすることなく、メールアプリを閉じた。
そしてアドレス帳を開くと、迷うことなく翔くんの名前をタップした。
コールを続ける電話を耳に宛て、鼻を一つ啜る。
「もしもし、智くん? 収録終わった?」
いつもと変わらない翔君の声。
「うん、さっき終わった」
「そっか。じゃあ早く帰っておいで? 今夜は二人でお疲れ様会しよ?」
「うん、急いで帰る。あ、ねぇ、翔くんはさ、僕のどんな声が好き?」
”飾らない声が好き”って言われても、正直僕には良く分かんないや…。
「うーん、そうだなぁ…。笑い声、かな? 智くんには分かんないかもしれないけど、癒し効果抜群なんだぜ?」
「ふーん、そうなんだ…」
やっぱり僕には良く分かんないや…。
でも、翔くんが”好き”って言ってくれるなら、僕はいつも笑ってるよ。
僕の笑い声が君の癒しになるなら…
たとえこの声が届かなくても、
僕はいつだって君の傍に…
おわり♡