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【刀剣乱舞】心はじじい

第3章 【心はじじい】 狸と槍(男主)


「あーるじっ!」
「鶴さんや、廊下を走ってはいけないよ。」
「すまん!でもそれどころじゃない!」

スパーンッと開け放たれた障子を一切見ることなく政府宛の報告書をまとめている私のことなど気にせず、ズカズカと入ってきた真っ白な鶴丸国永が背中にひっついてきた。

審神者生活二年を迎えそうな冬の真っ只中。
迎春を迎えもう直ぐ春が訪れるとはいえまだ肌寒いなか人の体を得た刀の鶴丸は暖かい。

ドタドタと足音を響かせていたし相当走ったのだろう。
何事かと聞く前に鶴丸は私の体を揺すった。

「とてつもなく暇だ!!」
「光坊にでも構ってもらいなさい。」
「あいつは伽羅坊と内番だ!粟田口の短刀達も池田屋に出陣中!三条の連中も遠征で構ってくれる奴がだーれもいない!」

背中にグリグリと頭を押し付けられて書いていた筆が止まる。
揺すられて仕舞えば墨が飛び、書くこともままならない。
致し方なく筆を置いて後ろの鶴丸の背を叩いた。

「だからと仕事中の私に構ってもらおうとするんじゃないよ。今本丸には御手杵と同田貫がおっただろう。あの子らと遊んでいなさい。」
「御手杵はともかく同田貫はノリが悪いんだ!」

大倶利伽羅と共に来た中堅の同田貫は最近やってきた御手杵と気が合うとよく共にいる。
大所帯の本丸はなるべく関わり合いのあるもの同士を同室にしているのだ。

最初の頃、御手杵は先にいた日本号と蜻蛉切と同室で人の体というものを学んでいた。
短刀と太刀が違うように槍もまた槍の悩みがあるらしい。

天下三名槍での共同生活を経て出陣や遠征で気の合うものを探していく中素直な御手杵は直ぐ本丸に溶け込んだ。

しかしどこか遠慮している節があり気の置けない者というと同田貫と同じ槍の者達が限界。
結局気難しくあぶれ者の同田貫の同室で落ち着いたというのが事の顛末だある。

「御手杵は戦さ場に出た数が少ない故に幼子のように純真で好奇心旺盛なのだ。言うこと聞いてくれるからと変なことを吹き込むでないぞ。」
「俺は驚かせるのは大好きだが子供に悪いことを教えるほど酷いジジイじゃないぜ。」
「ならば良し。彼らと遊んでらっしゃい。このお饅頭でも手土産にな。」

ブスくれる鶴丸はトボトボと出て行く。
なんとか追い出すことに成功し私は再び筆を取り始めた。
初期の頃より丸くなった同田貫ならば鶴丸と御手杵の面倒を見てくれるはずだと信じて。
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