第13章 会社を辞め、ついて行く。
ーAfter 4 years
春、小さな足音がとてとてと私に近づく。
「ままー?おしたくできた?」
「できたわよ?今行くからね。」
ドレッサーから目を離し、くりくりの瞳に向かって微笑めば、その子は嬉しそうに微笑みたたっと走って行く。
「ぱぱー!ままおしたくできたってー!」
「ママ美人だったべ?」
「うん!かわいー!」
リビングに戻ったらしい息子が孝支に嬉しそうに報告する。
「ねえまま?わたしもかわいい?」
いつのまにか部屋にいた娘。
ヒラヒラのスカートを翻し、私にそう問うた。
4年前の11月。
私は双子の男女を出産した。
少し垂れ目でやや癖っ毛の男の子。
猫目でクセのないストレートな髪の女の子。
瞳の色や髪の色は少し色素は薄いけれど、それはきっと孝支に似たのだろう。
ちなみにあれから灰羽くんとは全く会っていない。
子供ができたため、孝支の実家も近い仙台に永住することにしたからだ。
たまに東京に行った時に会う潔子から話は聞くけれども…
「もえぎとってもかわいい。準備できたからせいじのところに一緒に行こうか?」
春色のスーツに身を包み、久しぶりの赤色ルージュを唇に乗せた私は、小さな手を引きながらリビングの扉をくぐる。
「孝支?カメラの準備できてる?」
「バッチリ。やっぱり文乃は美人だな。」
そう褒める孝支に微笑むと、私は双子に話す。
「じゃあ今から幼稚園にお出かけです。
自分でお靴、履けますかー?」
「もえぎできるー!」
「せーじもできるもんっ!」
「じゃあどっちが先にお靴履けるか競争ね?
よーい、どんっ!」
一目散に玄関に駆けていく2人。
それを追いかける孝支。
それを見て、私は幸せを噛み締めた。
「2人とも、入園おめでとう。」