第2章 こんにちは
よくよく耳をそばだてると、聞き慣れないが怒号や爆音と思わしき音がした。トラ男は握った刀をそのまま持ち出し、「そこから動くなよ」と言った後部屋を出ていった。部屋に残されたのは当然と言うべきか私とキャスケット帽子になるわけだが、この男、一緒にいるにはとてつもなく頼りにならない。いや、だって「ハンコックに会いてぇな」的なこと言ってニヤニヤ笑ってたよね。完璧モブキャラだよね。無理無理。万が一海軍がこの船に乗り込んできたらどうなるの?保護される?赤犬みたいなの来たら勢い余って殺されるという可能性もなくはないよね??
「こんなグラサン野郎盾にもならん」
「俺が命にかえてもキリちゃんを守るぜー!!」
「なんか重いのに信用出来ない」
「えええー!!」
キャスケット帽子はうるさいし、外も相変わらず騒がしい。…というよりも一層確実に音は大きくなっている。廊下の方の足音とか本当に洒落にならないんだけど!!!!!!
「シャチ、出航するぞ手伝え!!」
大きな音がして再び部屋の扉を開け放ったのはペンギン帽子をかぶった男。「キリちゃんはここにいて!絶対に君を死なせたりはしないぜ☆」なんて、なんとも押し付けがましいセリフを吐きやがったキャスケット帽子が颯爽と部屋を飛び出していった。ご丁寧に、外から鍵までかけて…だ。
「……ん?」
あれ、ウソ鍵?これ内側から開かない感じ?え?てか今出航するって言ったよね?え、何それ私降りられないの?私を降ろしてから出航する選択肢ってなかったの??ねぇちょっと本当に誰か開けてくんない???
【こんにちは、ペンギン帽子】
さよなら、私の平和な日々……