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名の無い関係

第13章 変化


845年春。
王覧試合での優勝から、人類最強と呼ばれるようになり兵団内でのリヴァイの立場も大きく変わった。
入団から僅か一年弱でのスピード出世。
元地下街育ちのゴロツキ。そんな自分が班長を任されるまでになった。自分を慕ってくれる部下や仲間達ができた。


『リヴァイ、久しぶり!』


不思議なものだ。
忙しさというのは、色々な事をわすれさせてくれる。
面と向かって会話をするのはいつ以来だろう。
色々と噂では聞いていたせいもあるのかもしれないが、久しぶり、という彼女の言葉に引っかかる。


「相変わらずだな。」

『リヴァイはちゃんと班長やってるじゃん!偉い、偉い。』

「っち!なんだよその言い方。」

『育ての先輩として?は鼻が高いよ、人類最強殿。』


嫌味ではないのだろうが、彼女にまでそれを口にされるのは何故か嫌だった。


『そうそう、これ。次の壁外調査の内容書類。よく読んでわからないところがあったら聞きに来て。』


それじゃ、とアゲハは訓練場をあとにする。
新たな兵を迎え、新体制で動き始めた兵団。
一応、自分の班は彼女を隊長とする分隊の中にある。だが、昔の様にはいかない。
兵団内の規律、立場、そういう目には見えない柵に囚われて簡単には近付けない。
まして団長補佐を担うエルヴィンには尚更のこと。
彼が通る時には道を譲り頭を下げるべき相手なのだ。


「流石リヴァイ班長。アゲハ隊長が直々に来て下さるなんて、なんか感激しちゃいました。」


班員達のこの反応が正しい。
百人単位の分隊のトップ、それが彼女なのだ。


「お前達はもうあがれ、明日は朝の掃除当番だからな!」


訓練を終わらせ解散を宣言して、渡された紙の束を巡る。


「ん?」


第三分隊極秘事項と書かれた小さなメモが落ちる。


『今夜消灯時間後にこっそり部屋に来て。』


小さなメモに目を走らせ、そっとそれをポケットに入れた。


「入るぞ。」


こっそり、と書かれていたからノックをせずにドアを開けた。
相変わらずの散らかり様。
地図や陣形、難しそうな数式が書かれた紙が散乱していた。
脱いだ服がないだけ、以前ここに来た時よりはマシだろう。


『ゴメンね、規則違反させて。』
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