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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第16章 織物のように(三成)


陽も傾きかけた頃、愛と三成は機織小屋を後にする。


「今日は本当にありがとうございました。
これからも、みなさんの反物を少しも無駄にしないよう心して使わせて頂きますね」


『私も、出来上がったものは見ていましたが、こんなに大変で緻密な作業とは思いませんでした。
愛様にお供させてもらって本当に良かったです』


二人が深々と頭を下げて礼を言う。


『今日はお二人にお会いできて、本当に嬉しかったです。
これからも主人をご贔屓にお願いしますね』

小夜はそう言うと、一つの包みを三成へと手渡す。


『これは?』

三成が驚いて言うと、


『宜しければ、こちらの反物をお持ち下さい。
私たち職人の技術が詰まった品です』

包みを開けると、そこには見事な柄が施された反物だった。


「え?!こんな高価なもの頂けません!
さっきご主人が、ひと月以上かかるって言っていたものじゃないですか!
それよりも複雑だし…駄目ですよ!」


愛がその反物を見るなり、慌てふためく。


『いいえ、ぜひ貰って頂きたいのです。
この織り方を作り上げるまでに、先人の職人たちはとても時間をかけました。
それがこうして、色々な方の目に触れる機会に恵まれたのです。
ぜひ、愛様にこの反物で作った着物を着て頂きたいのです』


「でも…」


未だ困惑する愛の背中に、三成がそっと手を触れる。


『愛様、皆様の心からの贈り物です。頂いていきましょう。
その分、私たちは私たちのやり方で恩返しをしていけばいいのではないでしょうか』

優しく微笑む三成の言葉が、愛の胸にすっと温かく溶けた。

(そっか…。織物を作る人、着物を仕立てる人だけじゃない。
流通させる人、宣伝する人それぞれの立場で…私にできることは…)


眉尻を下げながら、愛は感謝の言葉を伝える。


「わかりました。ありがたく頂戴致します。
それで、素敵な着物を作って信長様に褒めて貰います!」


『信長様に?』

主人と小夜が今度は困惑する番だ。


「はい!それで、お城中の着物はここの反物が使われるくらいまで頑張りますね」


愛の意図するところを汲み取った一同は、
自然に笑顔を漏らした。


ー愛様ならできますよー


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