『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第2章 ふれた手の温もりがいつまでも離れない
協力すると言ってから
私はユカと恋愛話をするようになった。
ユカはヒロイン基質であり
可愛らしくて前向きで女の子らしい
けれど彼女は女子バレー部の主将
普段のギャップを見てもカッコよくて
モテるのは頷けた。
「四葉どうしたの?」
「!…ううん、なんでもないよ?」
「そう?あっそれでね…」
彼女の好きなタイプは
優しいけど、意地悪な人だと言った
黒尾くんとユカが話しをするのを
私は見た事がある。あぁ…その時
私は全て分かってしまった
二人は両片想いなのだと…
遠くから見ていてもお似合いで
とても理想的に見えた。
「脇役がヒロインになんて勝てる訳がないのに…」
ただ遠くからしか見えない、言えない
だから私は気付かれないよう
そっと胸に仕舞い込み
『貴方が好きです、一目見たときから』
そうひっそりと心の中で呟いた
ーーー…
「朝倉さん、今いいか?」
「えっ…どうしたの黒尾くん」
まさか私に話し掛けて来るとは
戸惑いながらも希望は持たない
ユカの事ですか、分かります
なんて思いつつ…今日ユカの事を話した
「成雲って分かんねぇよな…」
「黒尾くんっはユカの事本当に好きなんだね」
「っ!…そんなにも分かる?」
「うん、でも今の黒尾くん…素敵だと思うな」
好きな人の為に頑張ろうと努力する姿
私が茶化した言葉に
照れながら苦笑いする目の前の彼。
きっと私にしか知らない
本当の素顔なのだろうと思えた
そんな彼がやっぱり好きだと思えてしまう
私なりの精一杯の気持ちを『素敵』だと…
言う言葉で濁して伝えて見た
……貴方は私の気持ちは分からないだろう。
「朝倉さんは気になる男とかいないの?」
にやりとした不適切な笑みに早変わり
そんな言葉を貴方からは
聞きたくはなかった
そう思いながらも
平気で嘘を吐く私が顔を出す
「どうだろう…もしもいたとしたらどうするの?」
「あぁー…俺が知っている相手なら手伝うし協力する」
無理だよ。私が好きなのは
目の前の貴方だから
なんて言える訳もなく…
弱虫の私は無理にでも作り笑い
そして「ありがとう」と呟いた。
ーーー…
協力するなんて
自分が辛くなるのは分かっている
でもそれで貴方と会話出来る事が
少しでも増えてくれるというのなら…
私は平気で嘘を吐き続ける。
「ねぇ四葉…大丈夫?」
