第76章 情慾

鎖骨から顎の下までべろりと舐め上げ、喉に噛り付く。

ちゅっと高い音が鳴る度に、肩を震わせて熱い息を吐くのが主殿の口を塞いだ左手に伝わる。

「さん…このキスの意味は解りますか？」

んっ、と鼻に掛かった様な声を上げ、白い喉を反らせる主殿に思わず欲情した。

「喉元へのキスは欲求。…さんが欲しくて噛み付きたい程ですよ。」

そして……

もう一度、両手でしっかりと両頬を包み目を見詰める。

「っ‥い、ちご…」

「さん、私は貴女を愛してしまいました。‥どうか少しだけ、貴女が皆に振り撒くその愛情を私にだけ頂けませんか……」

そっと唇へキスをする。

唇へのキスの意味は、愛情。