第36章 鍵①
もう男が消えてからどれだけ経ったか解らなくなったある日、政府からの使いの者がやって来た。
すっかり痩せ細り、男の名前以外呼ばなくなった審神者が、その者に言ったんだ。
自分の記憶を消してくれ、と。
もうこんなのは耐えられない、全てを壊してしまいそうだ、頼むから私の記憶を消して欲しい。
そう、頼んだ。
使いの者も、審神者の仲間の者も皆が反対したんだ。…でも変わらなかった。
審神者の仲間は、審神者をとても慕っていた。それは仲間より家族、それ以上の気持ちで想っていたんだ。
だから、それならばと、仲間達も自分の記憶を消し、審神者の前から消える事を望んだ。