第94章 今を生きる
「優しくて可愛くて、一緒に服見たりお茶したりさ、あるじさんと一緒に居ると楽しくて、だからあるじさんの事は前から好きだった。‥けどね、あの日一緒にお風呂に入ってみたらさ、あるじさんて細いんだよね…折れちゃうんじゃないかってくらい。」
その時を思い出すように、両手を握って目を閉じる。
「あんなに細い腕でボク達を鍛刀してここへ呼んでくれたんだよ。あんなに小さいのに、一生懸命、皆の為に強い自分を作ってたんだよ。それ見たらさ、守りたいなって思ったんだよね。」
目を開けた乱れが、今まで話を聞いてきた皆みたいに柔らかく笑う。
「ボク、あるじさんが好きだよ。あの人を守りたいんだ。ボクが、この手で。」
掌に視線を落とすと、その手を大事そうに握り締めた。