第92章 夜桜
主ちゃんの部屋に入ると、もう皆の着替えは済んだのか、誰も居なかった。
「皆、ちゃんと終わったのかな?」
「加州と乱ちゃんが、向こうの部屋に居ると思うけどね。さ、早く早く!」
部屋の奥の扉を開け、ぐにゃりと歪んだ空間に足を進める。
いつもの様に、ぱっと目の前が弾けるみたいな感覚があって、顔をあげるとすっかり見慣れた猫部屋に出た。同時に、そこに居た二人と目が合う。
「あ、主ぃ!見て見て、どぉ?ちょっとは、可愛くなったかな!」
「あるじさん、ボクもお着替えしたよ!似合う?」
「格好良いね!主ちゃんもそう思うだろ?」
普段の二人からは想像出来ない、単一色の濃淡や明暗だけで表現した様な装いだ。加州君は白を、乱君は黒を基調としていて、随分と大人っぽい服を選んだみたいだね。