第89章 夢路
「…んん!!っは!」
わざと長く口付けをし、息も出来ない状態にしてから唇を離すと、酸素を求めて苦しそうに口を開き、はぁはぁと肩を揺らす。
「ふっ…鼻で息をしろよ。そんなんじゃ溺れる。」
薄く目を開いて俺を見てから、不貞腐れた様に唇を噛み顔を背ける。
ふっ‥仕方ない、とでも言いたげな顔だな。髪を撫でて、への字になった唇を指でなぞり 、ふにふにと遊ぶ。
「…、こっちを見ろ。」
名前を呼ぶ度に、少し照れた様に視線をさ迷わせるのも、見ていて面白い。そんなに俺に呼ばれるのは違和感があるか?…まぁ、普段は呼ばないからな。
「。」
「く、りから‥」
嬉しい。こいつが俺を見る、名前を呼ぶ、それが嬉しい。今この時だけは俺を考えている、それが何よりも嬉しい。