第89章 夢路
「半日やる、と言われたのに結局半日も無かったじゃないか。だから今夜も俺に譲れ!」
「はぁ?お前、一晩一緒だったろ?今日は俺達の番なんだし、しっかり半日は一緒に居たんだからもう文句を言うな!可愛気の欠片も無い奴だな。」
へし切と国永が、あいつの寝る部屋をどうするか、と揉めたのが三時間程前だった筈だ。
結局、国永があいつを部屋に連れて来て、トランプしようぜ!とか言いながら馬鹿みたいに遊んで、例の寝袋に入ったまま転がっていたが、気付けば静かになっていた。
首元に擦り寄ってきた猫を撫でながら、時計の秒針を見詰める。
もうすぐ向こうへ帰れると言っていたな、こうして眠るのもあと少しか。国永は毎度あの調子で五月蝿かったが、最近では、悪くは無かったんじゃないかと思う位にはなった。