第84章 ジャックダニエル
「ちっ、こんな物を…」
「あは。つい、ね。」
はぁ、と溜め息をついた長谷部君が、ごろんと仰向けに寝かせたちゃんの胸に顔を埋める。
「は、長谷部君?」
顔を上げ、僕を見て、ふっと笑う。つっと指先で拭ったちゃんの胸元には、小さな赤い華が咲いている。
「…君もしてるじゃないか。」
「俺の主だ、構わんだろ?」
「はぁ、まるで赤バラみたいだね。‥赤いバラの花言葉は知ってる?」
「"貴女を愛しています"、だ。」
ちゃんの頬を撫でた長谷部君がその通りだろ、と笑う。
もうホワイトデーは終わったのに、これじゃどちらが贈り物をされたのか解らないね。朝になったら謝らなきゃなぁ…
ちゃん、早く起きて、僕は君の怒った顔も好きなんだよ。それで、ちゃんが怒ったらこう言うんだ。
チョコレートみたいな君がいけないんだよ、って。