• テキストサイズ

フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第11章 <番外編SS*冬> Sweet Birthday【赤葦京治】



朝は苦手だ。冬の朝はもっと苦手。
この季節のベッドには魔物が棲んでいると思う。
睡魔と温かさで惑わし、俺の身体をなかなか離してくれない。


「京治さーん?おはようございます。朝ですよー」

「イヤ」

「え?」

「もうちょっと寝る…」


寝室に入ってきた汐里に肩を揺すられるが、断固拒否する。
うちに泊まりに来た時、仕事に遅刻しないようにといつも早目に起こしてくれる汐里。
だから時間に余裕があることはわかっているのだ。


「もう、困ったさんなんだから…」


困ったさんでいいです。
まだ寝たいんです。


「お誕生日おめでとう。京治」


「……」


ハッキリと耳に届いた言葉。
一瞬で頭が冴え渡る。

目を開くと、ベッドに手を付いて俺の顔を覗き込む汐里がいた。


「今、名前…」


「……誕生日だから。呼んでみよっかなって…」


今日は12月5日。俺の誕生日。
夜中、日付が変わった時もお祝いの言葉をくれた汐里だけど…。
今は何だか、すごく恥ずかしそうにモジモジしている。

「やっと呼び捨てに格上げ?」

「え?」

「嬉しいよ。おいで?」

腕を掴み、魔物の棲みかに引きずり込む。

「きゃっ、ちょっ、京治さん、遅刻…」

「京治、でしょ」

「……京、治。遅刻しちゃうよ?」

汐里の体をギュッと抱く。

ああ…、温かい。可愛い。幸せだなあ…。

「大丈夫。誕生日だからワガママ聞いてよ。少しイチャイチャしたい。それから、いっぱい名前呼んで?」

プレゼントもご馳走もケーキもいらないから。
汐里の温もりと、俺の名前を呼ぶ可愛い声が欲しい。

「けぃ……じ?」

「何か…段々ぎこちなくなってない?最初のが一番スムーズだった気が…」

「もう、意地悪言わないで!これからは "赤葦さん" に格下げ!」

「ごめんごめん。好きな子には意地悪したくなるって言うだろ?」

「……それ、ズルい」

「好きだよ、汐里」

「好きだよ。…京治」

腕を絡めてくる汐里をもう一度抱き直し、ひとつキスをする。


「生まれてきてくれて、ありがとう…」


まるで陽だまりにいるみたいだ。
どんなに寒い日だって、汐里はいつも、春を連れてきてくれる。



【 end 】


/ 680ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp