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フォンダン・ショコラ【ハイキュー!!】

第5章 glass heart【赤葦京治】



郊外の、キャンプ場も併設された敷地内。
真夏だから日は長いけれど、近くには林もある。
薄暗い場所に入り込むのは物騒だ。
俺の言う意味を理解したようで、汐里は黙って頷いた。




他の三人とは別の方角に向かって、俺たちは歩き始める。
草が生い茂る林の中。少し立ち入っただけで、子どもなら来た道を見失ってしまうだろう。
しかも夕方とはいえ、まだ気温は高い。
水分不足から熱中症にでもなったら…
頭を過るのは悪いことばかり。


長い坂道を二人で登っていく。
傾斜は緩やかだが決して足場がいいとは言えない。
結構な時間歩いたけれど、ここまで来るのに誰ともすれ違うことはなかった。
小さな人影を見落とさないよう、良太くんの名前を呼びながら汐里の先を行く。

しばらく経つと、少し後ろを歩いていた汐里の足音が突如止む。
俺もその場に立ち止まり、振り返った。


「もう少しゆっくり行こうか」


「…大丈夫です」


緩やかな斜面でも、長く歩いていれば足にくる。
厳しい表情で呼吸を整えつつ、汐里はまた一歩踏み出した。

口にはしないけど…
もしかして、"自分のせい" なんて思ってるんじゃないだろうか。
一度は良太くんの姿を見かけたのに、引き留めなかったことを気に病んでるんじゃ…。
汐里の様子を見ていると、そんな風に思えてしまう。


スマホのディスプレイを確認してみるが、映されているのは見慣れた待ち受け画面だけ。
誰からの着信もない。

まだ見つかっていないということか…。
密かにため息をつく。
あまりに時間が経過するようなら、警察に連絡をした方が…


「赤葦さん…」


汐里がキョロキョロと当たりを見回しながら、俺を呼ぶ。


「…?どうした?」


「子どもの泣き声、しません?」


「え?」


そう言われ、耳を澄ましてみる。
風でそよぐ木々の葉の音に紛れて、小さな声が耳に届いた。
確かに、子どもの泣き声だ。


「あっちかな?」


来た道を逸れ、更に足場の悪い林の中を進む。今度は足早に。
歩いていくほどに、泣き声ははっきりと聞こえてくる。
近くにいる証拠だ。


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